2014/09/30 Tue. 14:06:29 edit
鋼牙とカオルに降りかかった三頭身化という災難からしばらくたったある日、のどかな閑岱に轟く悲鳴。
北上音夢が贈るほのぼの日常ロマン「チビがろ君」閑岱編。「どうしてこんなことに……」
そんなの作者も知らない。
というわけで、今回の舞台は閑岱。例によって原作の作品背景はぶっ飛んでいますので、前作でアレルギー反応が出た方は全力回避していただくことをお勧めします。(特に翼ファンの方)
みんな嫌いじゃないのぅ。むしろ大好きなの!!!
ということで、ここから先は新カテゴリ「チビがろ君」の世界です。キャラクターがカッコ良くなくても大丈夫という方、ドアを開けてくださいませ。
老魔戒法師・我雷が長を務めるここ閑岱は、そのほとんどを魔戒法師が占めている。
法師の里ともいえるその場所を守護する騎士は白夜騎士・打無の称号を持つ山刀翼と彼の弟子、日向、暁の三名のみ。
先の大戦「魔戒閃騎」において一時は危ぶまれた騎士と法師の関係も無事修復され、日向・暁という二人の騎士を育てた翼はその実績を買われ、騎士見習いの少年たちが集う修練所の教官として四十万ワタルらとともに日夜後進の育成に力を注いでいた。
「~それじゃあ、週明けからしばらくは体が空くのかい?」
食後の片づけを終えた邪美がテーブルに湯呑を置きながら翼に問いかける。
「ああ、次が来るまで五日から七日ほど間が空くらしい。もっとも、子どもたちが来る二日前には修練所に戻らなければならんがな」
「じゃあ、最大で五日間は休めるんだな……」
ブツブツと何やら考え始めた邪美に僅かに嫌な予感がよぎり、
「今回はお前との手合わせもできそうにない。鋼牙の様子も気になる、明日行ってみようと思う」
先日レオと烈花、シグトが持参した手製のクッキーを口にした鋼牙とカオルが三頭身という通常ではありえない体型になったのを目にして以来、鋼牙のことが気になって仕方がないのだ。
「珍しいね。あいつに食って掛かるあんたはよく見るけど……」
「他人事とは思えん」
「何か言ったかい?」
「何も言ってない。とにかくそういうわけだから、すまないが、俺はムリだ。その分、鈴の相手をしてやってくれ」
二人の会話を聞きながら鈴は小さくため息をついた。
(兄、うまく逃げたつもりだろうけど、邪美法師の方が上手だよ、たぶん。)
鈴のその予想は翌朝現実のものとなって翼の身に降りかかった。
目を覚ました翼は、いつもよりも体が重いことに気付いた。
(起き上がれない、だと?)
上体を起こすことができず、しかたがないので体を横にしようとして、それもできないことに気付いた。
「鈴! 鈴!!」
大声を出して隣の部屋にいるはずの鈴を呼ぶ。
「どうしたのぉ、こんな朝早くからぁ」
まだ寝ぼけているのか、目をごしごしと擦りながら翼の元へ現れた鈴は、翼へ視線を向けたまま口をぽっかりと空け、目はこれ以上見開けないというほどに大きく開いて立ち尽くしていた。
「キャ~~~っ かわいい~~~~」
デ・ジャヴュ。既視概念。どこかで見た反応だ。
そんな考えが翼の頭の中を駆け巡っていた。
「すごい、すごい!! すごくかわいいよ、兄。ほら、鏡、見てごらんよ」
そう言って鈴は翼をひょいと抱き上げた。
(抱き上げる? ちょっと待て、なぜ俺を鈴が抱き上げることができる???)
その答えは、鏡の中にあった。
クリクリと大きな目。ツンツンと上を向いている髪の毛、着ている寝巻もサイズこそ違えど自分のものだ。どこも問題はない。
そう、一番の問題はそのサイズにあるのだから。
どこからどう見ても、まあるいその体型には見覚えがある。数日前、盟友のその姿を翼はこの目で見ているのだ。
「ウワ~~~~~~!!!!」
その声は朝の早い閑岱に絶叫となって響き渡った。
「縮んじまったねぇ、翼……」
そう声をかけては言って来た邪美に気付かないのか、壁に背を預けたまま項垂れている翼が、こちらを見る気配もない。
「翼?」
目線を合わせようと屈んだ邪美の耳に、何やらブツブツと呟く声が聞こえてきた。
「まあるい……まあるい塊が……どうして……おかしいものは口にしていないはずだ……鋼牙と同じ目に……なぜ……」
ブツブツという呟きが聞き取れた時、邪美は納得した。
(翼…あんたホントに気付いてなかったんだねぇ…不用心っていうか、素直っていうか……あんたらしいよ、ホント)
昨夜、鈴は気付いていた。食後のお茶と一緒に出した茶菓子のことを。
チビ翼の頭の上には黒い雲がグルグルと渦を巻いているように見える。
「鋼牙は凶暴になったけど、あんたはイジケ虫かい? 足して2で割るとちょうどよさそうだねぇ……いや待てよ…確か零もいたねぇ」
頭のすぐ上で語られる邪美の声にも翼は反応しない。
見ている方が気の毒になってくるが、そこは邪美である。
この際だからと鈴と二人、翼で遊び倒すことにした。
数時間後、ゴルバからザルバを通して閑岱まで呼ばれた鋼牙が、我雷法師と共に翼の元を訪れ、何とか中和させることはできたのだが、白夜騎士が立ち直るまでにはしばしの時間がかかったとか。
後日、三頭身化の原因が巡命の滝の水しぶきと巨大トカゲの肝臓の食べ合わせによるものだったことが元老院特別調査班(黄金騎士・牙狼、自らが陣頭指揮にあたった)の調べで判明し、この二つを同時に食することは固く禁じられたという。
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